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散歩する侵略者|「概念」の喪失というなかなか恐ろしい映画

「散歩」という日常的なキーワードと、「侵略者」という非日常のキーワードが合わさった少し違和感を感じるタイトルに釣られました。何だか知らないけどこれは観なければいけない、そんな気がしたのでこちらも初日に観てきました。

何が起こるか分からないこの時代にふさわしい、と言っては大袈裟だと思いますが、今だからこそ、自分の大切なものに気づかせてくれるような映画でした。


映画「散歩する侵略者」予告編(nikkatsuchannelより) 

冒頭からなかなか衝撃的。オープニングの掴みはOK

タイトルに釣られたはいいけど、そもそもこの映画はどんな映画なのか?という疑問を持ちながらの鑑賞でした。
別に予告を観たわけでもなく、ただ映画館の公開予定に載っているのを見かけたのがこの映画を知ったきっかけだったため、事前の予備知識が全く無かったのです。
しかしながら、そんな人でも大丈夫(?)なくらいオープニングが衝撃で、すぐに物語に引き込まれました。
「とりあえず何かヤバいものが地球に来た」ということは容易に理解することが出来、この後どういう展開になっていくのだろう、というのがすごく気になりました。

観進めていかないと面白さがこみ上げてこない映画も意外と多くある中、そういう意味では、早い段階で観客を映画に引きずり込むということになかなか成功しているのではないでしょうか。少なくとも私は、今後どんな展開になるのかワクワクしました。

ただ、正直ラストはオープニングほどの勢いはなく、どちらかと言えば考えさせられる感じに収まっていたように思います。
私は結構好きなテイストの映画だったので面白かったですが、壮大なラストを期待している方はちょっと方向性が違うかもしれませんのでお気をつけください。

この感じ…まるで世にも奇妙な物語を観ているような感覚

オープニングで受けた衝撃もそうなんですけど、映画タイトルや設定など色んなものに既視感を感じながら観ていました。途中でようやく気づいたんですが、これはあれだ、「世にも奇妙な物語」だ!という結論に至りました(笑う)

侵略者が登場してきますが、SFなのかと思いきや、夫婦の物語でもあったり、色んなジャンルを織り交ぜた不思議な映画で、テレビの「世にも奇妙な物語」で放送されていても違和感がない内容でした。
そういう意味では、そもそも映画にする必要あるの?と思ってしまうところでもあり、劇場で観る価値はないなんて一蹴してしまう人もネットで見かけたりしましたが、私は十分楽しめました。
(ダンケルクを観た後だったため、アクション要素があるシーンの迫力はあまり感じなかったのは正直なところです…)

ただ出演は、長澤まさみさん、松田龍平さん、長谷川博巳さん、高杉真宙さん、恒松祐里さん、前田敦子さん、満島真之介さん、児島一哉さん、光石研さん、東出昌大さん、小泉今日子さん、笹野高史さんといった豪華な方々で、特に「侵略者」役の松田さん、高杉さん、恒松さんは人間じゃない無機質な笑いや歩き方などの演技が不気味ですごく良かったです。

人間の「概念」を奪うという斬新なアイディアに考えさせられる

この映画の注目すべきポイントは、やはり「人間の概念」を奪うというアイディアではないかと思います。
侵略者は人間を乗っ取り、侵略のために活動します。その際、人間とはどういうものか調べるために、「人間の概念」を奪っていきます。
例えば、「家族」「仕事」「所有」「自分」等。
侵略者たちは、自分って何?家族って何?と問いただし、会話した相手からその「概念」奪います。奪われた人は、永遠にその概念が永遠に失われてしまう…という何とも恐ろしい内容。

私たちは、色んな概念に縛られて生きていると感じたし、その概念から開放されることは果たして幸せなことなのか、ということを深く考えさせられました。
また、概念を奪っていく侵略者は、何も知らない子供から大人へと成長していくような気さえして、概念を奪う(縛られていく)侵略者と、概念から解放された人間の対比なんかも、観ていて恐ろしさを感じました。
これはなかなか斬新な映画だなぁ…

あと、概念とは関係のない話題ですが、侵略が進んでいるにも関わらず人間がのん気にしている様なんか、まさに今の時代に照らし合わせることもできる場面があったりして、色んな意味で考えさせられました。

ラストは、見方によってはすごい衝撃的です…
色んな考察ができるかと思いますので、ぜひ劇場で観て欲しいと思います。私は2回目観にいこうかなぁ…


なかなか観たことないタイプの映画でしたが、コミカルな場面やシリアスな場面が入り乱れて、最後は色んな考察ができて…と、見所がたくさんある映画だと思います。長澤まさみさん、美人だったなぁ…

公式HP:散歩する侵略者

トップ画像引用:(c)2017「散歩する侵略者」製作委員会

鑑賞記録

劇場

TOHOシネマズ錦糸町
スクリーン3(シネスコサイズ)
上映回:2017年9月9日(土)21時15分~

本編前予告作品一覧(上映順)

(1)STAR WARS 最後のジェダイ

(2)Fate stay night

(3)ラストレシピ~麒麟の舌の記憶~

(4)ナラタージュ

(5)亜人

(6)曇天に笑う

(7)8年越しの花嫁

(8)覆面系ノイズ

(9)ナミヤ雑貨店の奇蹟

客層

20代 2割
30~40代 6割
50代以上 2割
男女比 7:3

備考

・本編開始後の入場者1名
・カップルで鑑賞している人が多かった

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三度目の殺人|真実が逃げ続ける、考察を観客に委ねる映画

日本映画史に残る心理サスペンスと言われてずっと気になっていたので、公開初日に行ってきました。

いやー、なかなか難解。
というか分からないことも多くて、すっきりした気持ちにはなれないけれど、かなり考察が捗りそうな見応え十分な映画でした。


「三度目の殺人」予告編(公式配信:ギャガ公式チャンネルより)

映画に引き込まれていくほど、俳優陣が熱演!

この映画のキャストは個人的になかなか豪華で、主演の福山雅治さんの他に、役所広司さん、広瀬すずさん、斉藤由貴さん、吉田鋼太郎さんなどが出演されています。

福山さんは、昨年のSCOOP!でちょっとゲスなカメラマン役をやっていたのを観て以来ですが、今回は弁護士という役柄。
しかも、「勝ちにこだわる」ことを徹底した弁護士ということで、映画の序盤でも、死刑から無期懲役に持ち込むために徹底した姿勢で臨んでいる姿が印象的でした。

対して、殺人犯役の役所広司さんの演技もとても素晴らしく、さすがベテランは違うなぁ…と物語に引きずり込まれるほどでした。弁護士の接見のたびに供述がコロコロ変わったり、感情の起伏だったり、瞳だったり、全てひっくるめた犯人の不気味さみたいなものが凄く滲み出ていて、福山さん演じる重盛弁護士もそれに振り回されて、「勝ちにこだわる」ことをそっちのけで真実を知りたくなってしまうというストーリーに納得してしまう圧倒的な演技でした。

そんな二人の他にも素晴らしい演技をされている方がたくさんいましたが、特に被害者の娘役の広瀬すずさんも圧倒的でした。
口数が少なく地味な役柄ではありますが、何かを訴えかけるような瞳を演技としてやられているのがホントに凄いと思いました。

「真実は逃げ続けた」キャッチコピー通りの展開にモヤモヤ

この映画のコピーに「犯人は捕まった。真実は逃げ続けた。」とありますが、まさにそれを体現するような映画でした。

話が進むにつれて、被害者の娘と犯人に接点があることなど様々な事実が浮かび上がってきますが、犯人が供述を二転三転させるため、それが真実なのかどうか、観客も振り回され続けます

ホントに、真実に手が届きそうなところまで来るんですけど、逃げていきます…そのため、すごくモヤモヤした気持ちになります

役所広司さんをはじめとした俳優陣の演技や監督の画の魅せ方がとても巧みで、真実に辿り着きそうだけど辿り着かない絶妙な位置に観客を置いていくのが憎らく感じてしまいます(笑)

そういう意味では、正解を有耶無耶にしている分、色んな考察をすることができる映画だと思います。
一人で観に行っても良いと思いますが、おそらく友人など複数人で観に行って、鑑賞後に感想や意見を交換するとより楽しめるのではないでしょうか。

犯人は前科があるという設定ですが、個人的には最初の事件をもっと掘り下げてもらえたら考察が捗りそうな気がしました。

全編通して静かな映画のため、それが苦手な人は不向き

この映画は、犯人と弁護士のやり取りや裁判などのシーンが大半を占めており、はっきり言って賑やかな映画ではありません
前項でも紹介した通り考察が捗りそう、かつ難解な映画で、どちらかと言えば静かで頭を使いそうな内容になっています。

そのため、こういった映画が苦手な方はおそらく楽しめないと思いますし、途中で眠くなってしまうと思います。

そもそも「映画」に求めるものは人によってまちまちだと思いますが、心理サスペンスとあるように、この映画は、笑ったり泣いたりというような感動を得るものではなく、考えさせられるものだと思いました。
ちなみに私は考察したりすることも好きなので、とても楽しめました。

映画タイトル「三度目の殺人」とは?

若干のネタバレというか考察となりますが、そもそも映画のタイトル「三度目の殺人」とはどういう意味なのでしょうか?
これは、観る人によって色んな見方ができるのかなと思います。

今回の犯人は前科があり、2回殺人を犯しています。その2回目の殺人のために逮捕され、犯行も自供していることから死刑は確実、というような話から始まります。

当然勾留されている為、明確に三度目の殺人を犯す描写というのはなく、それもあってか、映画のタイトルの意味が分からなかったという声もあがっていました。
私自身も、鑑賞直後はタイトルについてどういう意味なのだろうかと考えてしまいましたが、思い返すと色々伏線があり、最終的に一つの結論に落ち着きました。

具体的な考察はまた機会があれば改めて記事を書こうと思いますが、物語の途中で、犯人と弁護士が接見室のガラス越しに手を合わせるシーンや、ラスト、弁護士の「あなたは・・・」に続くセリフあたりがヒントになっているように思います。また、犯人を取り巻く人物たちの言動も織り交ぜると、より納得できる結論に辿り着けるのではないでしょうか。

そういう意味でも、結構観客に考察を委ねる部分が多いのかなと思います。こういう映画は、2度目が一番面白いので、時間を見つけてもう一度観に行きたいと思います。


役所広司さんをはじめとした皆さんの演技がとても素晴らしい映画でしたが、モヤモヤすると思うので観る方は覚悟して頂ければと思います。

色んな人に受けるものもあれば、観る人を選ぶものもある…映画ってホント面白いですね。

公式HP:三度目の殺人

トップ画像引用:(c)GAGA Corporation

鑑賞記録

劇場

TOHOシネマズ市川コルトンプラザ
スクリーン1(シネスコサイズ)
上映回:2017年9月9日(土)15時15分~

本編前予告作品一覧(上映順)

(1)嘘を愛する女

(2)ラストレシピ~麒麟の舌の記憶~

(3)ナラタージュ

(4)奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール

(5)探偵はBARにいる3

(6)ミックス。

(7)エルネスト もう一人のゲバラ

(8)ユリゴコロ

(9)ナミヤ雑貨店の奇蹟

客層

20~30代 5割
40~50代 5割
男女比 4:6

備考

・本編開始後の入場者6名
・福山雅治さんが主演のせいか、鑑賞した上映回では女性が半数を超えていた
・全編通してとても静かな映画のため、コンセッションを楽しむ余裕がない(ポップコーンなどの音が気になる)
・館外から持込した袋をガサガサしている音がとても響いた

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