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三度目の殺人|真実が逃げ続ける、考察を観客に委ねる映画

日本映画史に残る心理サスペンスと言われてずっと気になっていたので、公開初日に行ってきました。

いやー、なかなか難解。
というか分からないことも多くて、すっきりした気持ちにはなれないけれど、かなり考察が捗りそうな見応え十分な映画でした。


「三度目の殺人」予告編(公式配信:ギャガ公式チャンネルより)

映画に引き込まれていくほど、俳優陣が熱演!

この映画のキャストは個人的になかなか豪華で、主演の福山雅治さんの他に、役所広司さん、広瀬すずさん、斉藤由貴さん、吉田鋼太郎さんなどが出演されています。

福山さんは、昨年のSCOOP!でちょっとゲスなカメラマン役をやっていたのを観て以来ですが、今回は弁護士という役柄。
しかも、「勝ちにこだわる」ことを徹底した弁護士ということで、映画の序盤でも、死刑から無期懲役に持ち込むために徹底した姿勢で臨んでいる姿が印象的でした。

対して、殺人犯役の役所広司さんの演技もとても素晴らしく、さすがベテランは違うなぁ…と物語に引きずり込まれるほどでした。弁護士の接見のたびに供述がコロコロ変わったり、感情の起伏だったり、瞳だったり、全てひっくるめた犯人の不気味さみたいなものが凄く滲み出ていて、福山さん演じる重盛弁護士もそれに振り回されて、「勝ちにこだわる」ことをそっちのけで真実を知りたくなってしまうというストーリーに納得してしまう圧倒的な演技でした。

そんな二人の他にも素晴らしい演技をされている方がたくさんいましたが、特に被害者の娘役の広瀬すずさんも圧倒的でした。
口数が少なく地味な役柄ではありますが、何かを訴えかけるような瞳を演技としてやられているのがホントに凄いと思いました。

「真実は逃げ続けた」キャッチコピー通りの展開にモヤモヤ

この映画のコピーに「犯人は捕まった。真実は逃げ続けた。」とありますが、まさにそれを体現するような映画でした。

話が進むにつれて、被害者の娘と犯人に接点があることなど様々な事実が浮かび上がってきますが、犯人が供述を二転三転させるため、それが真実なのかどうか、観客も振り回され続けます

ホントに、真実に手が届きそうなところまで来るんですけど、逃げていきます…そのため、すごくモヤモヤした気持ちになります

役所広司さんをはじめとした俳優陣の演技や監督の画の魅せ方がとても巧みで、真実に辿り着きそうだけど辿り着かない絶妙な位置に観客を置いていくのが憎らく感じてしまいます(笑)

そういう意味では、正解を有耶無耶にしている分、色んな考察をすることができる映画だと思います。
一人で観に行っても良いと思いますが、おそらく友人など複数人で観に行って、鑑賞後に感想や意見を交換するとより楽しめるのではないでしょうか。

犯人は前科があるという設定ですが、個人的には最初の事件をもっと掘り下げてもらえたら考察が捗りそうな気がしました。

全編通して静かな映画のため、それが苦手な人は不向き

この映画は、犯人と弁護士のやり取りや裁判などのシーンが大半を占めており、はっきり言って賑やかな映画ではありません
前項でも紹介した通り考察が捗りそう、かつ難解な映画で、どちらかと言えば静かで頭を使いそうな内容になっています。

そのため、こういった映画が苦手な方はおそらく楽しめないと思いますし、途中で眠くなってしまうと思います。

そもそも「映画」に求めるものは人によってまちまちだと思いますが、心理サスペンスとあるように、この映画は、笑ったり泣いたりというような感動を得るものではなく、考えさせられるものだと思いました。
ちなみに私は考察したりすることも好きなので、とても楽しめました。

映画タイトル「三度目の殺人」とは?

若干のネタバレというか考察となりますが、そもそも映画のタイトル「三度目の殺人」とはどういう意味なのでしょうか?
これは、観る人によって色んな見方ができるのかなと思います。

今回の犯人は前科があり、2回殺人を犯しています。その2回目の殺人のために逮捕され、犯行も自供していることから死刑は確実、というような話から始まります。

当然勾留されている為、明確に三度目の殺人を犯す描写というのはなく、それもあってか、映画のタイトルの意味が分からなかったという声もあがっていました。
私自身も、鑑賞直後はタイトルについてどういう意味なのだろうかと考えてしまいましたが、思い返すと色々伏線があり、最終的に一つの結論に落ち着きました。

具体的な考察はまた機会があれば改めて記事を書こうと思いますが、物語の途中で、犯人と弁護士が接見室のガラス越しに手を合わせるシーンや、ラスト、弁護士の「あなたは・・・」に続くセリフあたりがヒントになっているように思います。また、犯人を取り巻く人物たちの言動も織り交ぜると、より納得できる結論に辿り着けるのではないでしょうか。

そういう意味でも、結構観客に考察を委ねる部分が多いのかなと思います。こういう映画は、2度目が一番面白いので、時間を見つけてもう一度観に行きたいと思います。


役所広司さんをはじめとした皆さんの演技がとても素晴らしい映画でしたが、モヤモヤすると思うので観る方は覚悟して頂ければと思います。

色んな人に受けるものもあれば、観る人を選ぶものもある…映画ってホント面白いですね。

公式HP:三度目の殺人

トップ画像引用:(c)GAGA Corporation

鑑賞記録

劇場

TOHOシネマズ市川コルトンプラザ
スクリーン1(シネスコサイズ)
上映回:2017年9月9日(土)15時15分~

本編前予告作品一覧(上映順)

(1)嘘を愛する女

(2)ラストレシピ~麒麟の舌の記憶~

(3)ナラタージュ

(4)奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール

(5)探偵はBARにいる3

(6)ミックス。

(7)エルネスト もう一人のゲバラ

(8)ユリゴコロ

(9)ナミヤ雑貨店の奇蹟

客層

20~30代 5割
40~50代 5割
男女比 4:6

備考

・本編開始後の入場者6名
・福山雅治さんが主演のせいか、鑑賞した上映回では女性が半数を超えていた
・全編通してとても静かな映画のため、コンセッションを楽しむ余裕がない(ポップコーンなどの音が気になる)
・館外から持込した袋をガサガサしている音がとても響いた

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