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羊の木|割とリアルなヒューマンサスペンス

田舎町に移住してきた人たちが、実は元殺人犯だったという予告でちょっと衝撃を受けた本作。
何か事件があったら真っ先に疑ってしまいそう…

まさに、信じるか疑うか。

人間の本性があぶり出されるような、リアリティのあるヒューマンサスペンス。
今回はそんな「羊の木」のレビューです。


映画『羊の木』予告編(Asmik Aceより)

「羊の木」ってどんな話?

刑期を終えた元受刑者を自治体が受け入れる新仮釈放制度により、閑散とした港町・魚深市に男女6人が移住してくる。市役所職員の月末一(錦戸亮)は彼らの受け入れ担当を命じられるが、移住者たちの過去を住民たちに知られてはならないという決まりがあった。やがて、全員に殺人歴がある犯罪者を受け入れた町と人々の日常に、少しずつ狂いが生じていき……。
シネマトゥデイより

田舎の町に新住民としてやってきた男女6人は、全員元殺人犯。
国の画期的なプロジェクトとして位置づけられる新仮釈放制度は、住居と雇用を自治体によって保障する代わりに、10年住むことを義務化することで少子化対策につなげることを意図したもの。

ただ、既存の住民には過去の経歴などを明かされることはなく、元殺人犯だと知っているのは、主人公の月末(つきすえ)をはじめとするごく一部の人だけ…

新住民の受け入れが済んでひとまず町の中に溶け込んだと思っていたところ、暴行の形跡がある遺体が発見される。
事件なのか事故なのか。
静かな田舎町のため、遺体が見つかった場所には多くの人だかりができていたが、その中に新住民の姿を見つけた月末は、少しずつ彼らのことが気になりはじめて…
という感じのお話です。

【ココが良い】音楽、演技

この映画は劇伴が良かったですね。
良かった、というのは少し語弊があるのですが…

一般的なメロディアスで感情を盛り上げるような劇伴じゃないんですよね。ピアノとかオーケストラみたいな音階がある感じではなく、なんていうか…色んな音?
田舎町だし、海とか風の音をしっかり聴かせるために、楽器を使った明確な音楽ではない感じにしたのでしょうかね。

一応、劇中に主人公が趣味でやっているバンド演奏で、ギターやらベースやらの音が出てきますが、そこのコントラストははっきりしているので、そういう意味でもちょっと新鮮な劇伴でした。(そもそも劇伴と呼んでいいのか分からないけど)

なので、物語の盛り上がりを音楽に頼らないので、その点がすごいなぁと思いました。

あと、キャストも豪華でみなさん演技がすごい良かった…
主演の錦戸亮さんはジャニーズですけど、全然違和感なかったなー…。いや、普通に上手かったと思う。

個人的に驚いたのは優香さんだな。
ほぼバラエティでしか見たことがなかったので、カワイイ人という印象があるんですけど、この映画の中ではかなり色っぽかったなぁ…
役柄もそういう感じなんですけど、大人の美人さんになっててちょっとびっくりしました。

そんな個人的な印象もさることながら、元殺人犯という難しい役柄を演じていたみなさんはホント良かったですよ。

それぞれのキャラクターの特徴というか、性格というか、ホントにリアリティがあってかなり怖かったです(笑)

松田龍平さんが演じる宮腰なんか、嫌ですね…
だって怖すぎるもん…
後半のとあるシーンにびっくりして椅子から飛び上がってしまった…
とりあえず、この映画を観て率直に思ったのは、幽霊とかよりも人間が一番怖い!

【ココはちょっと…】分かりやすい伏線

宣伝でヒューマンサスペンスと銘打ってるだけあって、人間ドラマをしっかりと観るべきなんでしょうね。

ストーリーの展開はサスペンスらしく、この先どうなるんだろうという不安を抱えながら観る場面もあったんですけど、伏線が分かりやすくて、そういう意味では若干面白さに欠けました。

原作とは変更されている部分もあって、結末は映画オリジナルだそうなので、ヒューマンドラマの方により重点を置いた感じにしたんでしょうね。

なので、おぞましさや優しさなど、人間の色んな姿を観る映画なんだと思います。

タイトルの「羊の木」の意味とは

「羊の木」ってタイトル、気になりますよね。
劇中に出てくる、羊が木に生っている絵のことなんですけど、
正直な話、明確な意味は分からないです…(爆)

ただ、公式HPにも掲載がありますが、映画の冒頭に、

その種子やがて芽吹き タタールの子羊となる
羊にして植物
その血 蜜のように甘く
その肉 魚のように柔らかく
狼のみ それを貪る
「東タタール旅行記」より

という言葉があります。

個人的な解釈ですが、前科者が罪を償い、社会復帰の一環として田舎町の住民となることで田舎町の少子高齢化を救うという劇中のプロジェクトに照らし合わせているのだと思いました。
そして、それが上手く循環していくことが望まれるのに、狼がそれを壊すということを示しているのではないかと解釈しました。

つまり、新住民としてやってきた男女6人の中に狼がいるということ…(恐ろしい)

あと、ちょっとググってみたところ、昔のヨーロッパの人は、綿は羊の生る木から取れると思っていたというお話があるそうです。そのことから、羊の木というのは、「純粋で単純な発想」、「信じること」といった意味合いがあるそうです。

この映画は、元殺人犯という過去を持った人たちが、平凡な田舎町にやってくるということを描いています。
一般的に、元殺人犯なんてことを知ったら、距離を置きたくなると思いますが、まさに、先入観だったり、見た目の印象、言葉の印象といった、羊の木のような発想で人間を見ていないかということが投げかけられているような気がします。

というわけで、羊の木の評価は…

音楽★★★☆☆
物語★★★☆☆
脚本★★★☆☆
演出★★★★☆
感情★★★★☆

総合評価3.4

公式HP:羊の木

トップ画像:©2018『羊の木』製作委員会 ©山上たつひこ、いがらしみきお/講談社

鑑賞記録

劇場

TOHOシネマズ錦糸町
スクリーン7(ビスタサイズ)
上映回:2018年2月17日(土)20時50分~

本編前予告作品一覧(上映順)

(1)ボス・ベイビー

(2)リメンバー・ミー

(3)ブラックパンサー

(4)友罪

(5)ラプラスの魔女

(6)ちはやふる-結び-

(7)去年の冬、きみと別れ

※プリンシパル~恋する私はヒロインですか?~プロモーション映像

(8)プリンシパル~恋する私はヒロインですか?~

(9)空海-KU-KAI

客層

20代 1割
30代 4割
40代 4割
50代~1割
男女比 3:7




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伊藤くん A to E|岡田将生さん演じる伊藤に振り回される女たちの物語

2018年、明けましておめでとうございます。(遅)
年も明けて、今年の映画始め、1本目の映画は「伊藤くんA to E」でした。

クズ男の伊藤に翻弄される女性たち、
そして主題歌のandrop「Joker」という曲が印象的な予告に魅かれて観に行ってきました。

新年早々、痛い映画からのスタート。
痛い1年にならないように祈りながら、今年も映画たくさん観よ…
ということで、伊藤くん A to Eのレビューです。


映画『伊藤くん A to E』 予告篇(showgatetrailerより)

「伊藤くん A to E」ってどんな話?

アラサーの元売れっ子脚本家・矢崎莉桜(木村文乃)は、自分の講演会に参加した4人の女性から受ける恋愛相談をネタにしようとする。取材を進めるうちに、彼女たちを振り回す男「伊藤」が同一人物で、しかも莉桜が講師を務めるシナリオスクールの生徒の一人・伊藤誠二郎(岡田将生)であることに気付くが……。
シネマトゥデイより

この映画には、色んな女性たちが出てきます。
A:ぞんざいに扱われる女
B:自分の殻に閉じこもる女
C:愛されたい女
D:ヘビー級処女
E:
それぞれの登場人物たちの群像劇のような構成になっています。
彼女たちに共通することは、伊藤という男の存在。
その伊藤がいわゆるクズ男で、彼女たちを振り回すというお話。

実は、伊藤くん A to Eのドラマも放送していたそうで…
そんなこととはTSU☆YU☆SHI☆RA☆ZU
いきなり映画から観に行ってしまった…
でも、初見でもストーリーとか理解できたし、映画を最初に観たとしても特に問題ない作りになっていました。

ちなみにドラマ版では、脚本家・矢崎莉桜がイメージしていることの視点で描かれているようです。
今回の映画では、A~Dの女たちの視点だったり、ドラマ版とは異なった視点となっていますので、ドラマを観た人は、視点の角度を楽しみながら観れると思います。

【ココが良い】キャスト、演技、主題歌

この映画は、岡田将生さんと木村文乃さんのW主演です。

伊藤くんを演じる岡田さんは、不敵な笑みや、人を見下すような目がなんとも恐ろしく、正に「痛い男」を演じ切っていました。
また、矢崎を演じる木村さんは、すごくプライドが高く、外面はいいけど毒を持っている女を熱演していました。

個人的には木村さんの演技が特に気に入っていて、伊藤に翻弄されて怒り苦しむ姿がすごい熱かった…!
美人さんだからちょっと見とれていたのもあるけど(笑)
最初は、伊藤と話していても平然とした態度だった矢崎が、徐々に動揺していく姿をよく演じていたと思いました。

また、他のキャストも、それぞれの役柄をしっかり理解して演じているのがすごい伝わってきました。

そもそもこの映画の登場人物は、みんなダメな人たちです。
ダメな方向性がはっきりしているので、一見現実的ではないと思いそうですが、たぶんどこかしら共感できるところがあるキャラばかりだと思います。

ちなみに私は、Bの女(自分の殻に閉じこもる)に少し似ている部分があり、ダメだなぁ…と思ってしまった次第。
ある意味、自分自身をも見直すきっかけにもなるのでは…

あとは、主題歌が映画にすごく合ってて良い!
エンドロールをノリノリで観てしまった…!
原作やドラマ等をしっかり読み込んだ上でじっくりと作られたそうなので、さすがというか、もうイメージぴったりの曲をありがとう!という感じでした。


androp「Joker」special movie (映画「伊藤くん A to E」ver.)
(UNIVERSAL MUSIC JAPANより)

【ココはちょっと…】劇伴の使い方、テンポ感

主題歌も良かったし、劇伴の楽曲自体は好きなんですけど、劇伴の使い方がちょっと良くないと思いました。

具体的に言うと、同じような楽曲を使い回していたので、音楽による物語の盛り上がりが無かったのが少し残念でした。
群像劇だし、そういう意味で同じものを使うのもアリだとは思いますが、個人的に、音楽は映画を盛り上げる重要な要素だと考えているので、もっと色んな音を鳴らして欲しかったなぁ…

あとは、映画全体の物語のテンポ感。
もうちょっとサクッと進めてもいいんじゃないかって思うシーンがいくつかありました。
何というか、「間」っていうんですかね。

伊藤に振り回されて女性たちが苦しんでるシーンとか、みじめなシーンの悲哀感を出しているのかもしれませんが、個人的にはもう少しテンポよく進めば良いのにと思いました。

プロットはすごく好きなタイプの話なので、個人的にはちょっと惜しい映画でしたね。

伊藤という男が映し出すもの

この映画の重要な人物である伊藤。
色んな女性を振り回すクズ男。

登場する女性たちは、考えが凝り固まっていたり、何かに捕らわれていたり、盲目になっていたり…
ある意味自分自身を見失っている人ばかり。
でも、振り回された女性たちは、みんな伊藤のおかげで一皮剥けていくんですよね。
そこがこの映画の面白いところなのだと思います。

「僕はリングになって、戦わない。戦わなきゃ負けない。」
伊藤が言ったセリフです。(確かこんなセリフだったような…)
伊藤は、自分が傷つきたくないから一生懸命になることを放棄し、目の前のことから逃げる男。
つまり、伊藤は人間の弱さなのだと解釈しました。

この映画を観終わってフッと思い浮かんだのが、中島みゆきさんの「ファイト!」という曲。

闘う君の唄を 闘わない奴らが笑うだろう

伊藤くんはまさに、闘わない奴らです。
でも逆に、そういった人をきっかけにして、「絶対見返してやる!」みたいなプラスのエネルギーが生まれるので、必ずしもその存在を否定することはできないと思います。
まぁ、クズなんですけどね(笑)

ただ、そのクズ男・伊藤も、振り回したはずの女性たちがどんどん自分から卒業していくのを見て、虚しさを感じていると思われる描写もありました。ラストシーンでは…

伊藤も、自分でリングに上がって戦う日が来ると良いですね。
そんなことを考えながら、この映画を反面教師にして、観ていた自分自身も色んなことから逃げずに頑張ろうと思いました。


というわけで、伊藤くん A to Eの評価は…

音楽★★★☆☆
物語★★★★☆
脚本★★★★☆
演出★★★☆☆
感情★★★☆☆

総合評価3.4

公式HP:伊藤くんA to E

トップ画像:(C)「伊藤くん A to E」製作委員会

鑑賞記録

劇場

TOHOシネマズ上野
スクリーン6(ビスタサイズ)
上映回:2018年1月13日(土)10時05分~

本編前予告作品一覧(上映順)

(1)いぬやしき

(2)名探偵コナン ゼロの執行人

(3)ちはやふる -結び-

(4)坂道のアポロン

(5)となりの怪物くん

(6)リバーズ・エッジ

(7)今夜、ロマンス劇場で

(8)羊の木

(9)不能犯

(10)CINEMA FIGHTERS

(11)パディントン2

客層

20代 2割
30代 4割
40代 3割
50代 1割
男女比 8:2




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