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シェイプ・オブ・ウォーター|水のようにスッと胸にしみる不思議で奇妙なロマンス【アカデミー賞作品賞受賞】

予告やポスターを見て、なんか不思議な感覚になったこの映画。
過度な期待はせずに観にいったんですが、いやー、すごかった。

見終わって、これはアカデミー賞いける!ってマジで思いました。
そしたらホントに受賞しちゃった…
作品賞、監督賞、美術賞、作曲賞の4冠に輝きました!おめでとう!

今回はそんな「シェイプ・オブ・ウォーター」のレビューです。


『シェイプ・オブ・ウォーター』日本版予告編(フォックス・サーチライト・ピクチャーズより)

「シェイプ・オブ・ウォーター」ってどんな話?

1962年、米ソ冷戦時代のアメリカで、政府の極秘研究所の清掃員として働く孤独なイライザ(サリー・ホーキンス)は、同僚のゼルダ(オクタヴィア・スペンサー)と共に秘密の実験を目撃する。アマゾンで崇められていたという、人間ではない“彼”の特異な姿に心惹(ひ)かれた彼女は、こっそり“彼”に会いにいくようになる。ところが“彼”は、もうすぐ実験の犠牲になることが決まっており……。
シネマトゥデイより

スリー・ビルボードと同じフォックス・サーチライト・ピクチャーズの作品で、本年度アカデミー賞に13部門でノミネートされている作品です。
本日発表の第90回アカデミー賞では、作品賞、監督賞、美術賞、作曲賞を受賞しました。

声を出せないイライザが出会った不思議な生き物。
最初は好奇心だったのが、ありのままの自分を見てくれる”彼”のことをいつの間にか想っていることに気づく。

二人が互いに感じあうには、言葉は必要なかった。
サスペンス要素もある、不思議で奇妙な愛の物語です。

【ココが良い】演技、音楽、映像

正直な話、見終わった後の余韻が凄すぎて、「良かった…(語彙力)」っていう感想しかなかったんです。
少しずつ思い出しながら良かった点を考えてみると、おそらく演技、音楽、映像になってくると思います。

まず演技は、主演のサリー・ホーキンスさんの全身を使った感情表現がほんっとに良かった。
声を出せない役なので、セリフは基本的に無くて手話で会話するんですけど、声を出さない演技でこれだけ感情を訴えることができるということに感動してしまいました。2015年に公開された「心が叫びたがってるんだ。」っていうアニメ映画も、主人公が声を出せない中での演技がすごいなーと思いましたが、それと同じ感動でしたね。

特に、はじめは好奇心だったのが、お互いのありのままの姿を言葉を介さずに感じあい、感情をぶつけ合っていくという、微妙で繊細な感情の変化が圧倒的だったね。
彼女は境遇的にはあまり良い人生ではないだろうし、”彼”もグロテスクなビジュアルなんだけど、外見じゃなくて、お互い心で惹かれあってるんだよな…
観ていて”2人”の幸せをただただ祈ってしまった。

また、この映画の中の音楽も印象的だったなぁ。
一部、ミュージカルっぽい演出もあったせいかと思うけど、”2人”の関係や彼女の感情をより深く表現するのを見事に手伝っていましたね。
というか、シーンのつなぎ目の音楽の使い方がすごい上手くて、観ているこっちの気持ちを途切れさせないんですよ。自分の好きな映画のポイントを突っついてくるなぁ…と思いました。

あとは映像ですね。
水のシーンは特にお気に入りです。
水の中で、彼女と”彼”が抱き合うシーンとか。
ただただ美しかったなぁ…圧倒的美しさ。
涙流れたし…

まさに映画のポスターのシーンですよ。
美しい画だし、そして最大のネタバレだと思う。。

映像関連でもう一つ。
この映画に猫が登場するんですけど、猫に萌えた…
イライザとジャイルズがやりとりしてるシーンの端のほうで、猫が自由に動き回ってるの。
意図を感じさせない自然な映像にほっこりしましたね。

【ココはちょっと…】観る人によって好き嫌いがハッキリしそう

前述の通り、自分はめっちゃどストライクな映画でした。
ただ、色んなレビューを見ても概ね高評価が多いのですが、観る人によって評価が極端に分かれてしまうだろうという内容でしたね。

不思議な生き物のビジュアルが受け付けない人もいるでしょうし、その生き物と人間というカップリングが厳しい人もいるでしょうし…
あと、裸や自慰、ベッドシーンなんかもありますし。(ベッドシーンに一瞬モザイクがかかります)
一応この作品はR-15指定ということで、暴力的なシーンもあります。

個人的にはベッドシーンだけは要らなかったなと思いましたが、それでもかなり胸に来るものがありましたね。

The Shape of Water

タイトルが素敵ですよね。
日本語に直訳すると、水の形。

この映画の中で、雨の日、イライザが乗ったバスの窓に付いている水滴のシーンがあります。
水滴が風に吹かれて流れていった先で、もう一つの水滴とくっついて一つになるっていうシーン。
すごい素敵だなーって思ったのと同時に、”2人”の結末を予感させる重要な部分かなぁと思っています。

あと、この映画に登場する人たちってほとんどがマイノリティなんですよね。
イライザも声を出せないので偏見を持たれてしまうキャラクターだし、
親友のゼルダは黒人女性、ジャイルズはゲイ。
肝心の”彼”は、ビジュアルもグロテスクな不思議な生き物。

マイノリティも含め、世界には色んな人がいるということをThe Shape of Waterに例え、その中のイライザと”彼”が一つになる物語だったんですかね…

というわけで、シェイプ・オブ・ウォーターの評価は…

音楽★★★★★
物語★★★★★
脚本★★★★★
演出★★★★★
感情★★★★★

総合評価5.0

公式HP:シェイプ・オブ・ウォーター

トップ画像:©Twentieth Century Fox Film Corporation.

鑑賞記録

劇場

TOHOシネマズ錦糸町
スクリーン4(ビスタサイズ)
上映回:2018年3月3日(土)20時50分~

本編前予告作品一覧(上映順)

(1)ラプラスの魔女

ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生~RP動画

(2)ミッション:インポッシブル フォールアウト

(3)ジュラシック・ワールド 炎の王国

(4)ハン・ソロ/スターウォーズ・ストーリー

(5)レディ・バード

(6)アベンジャーズ インフィニティ・ウォー

(7)ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男

(8)犬ヶ島



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女神の見えざる手|敵も味方も観客も欺くミス・スローン。2017年一番興奮した洋画。

戦略のプロ「ロビィスト」をテーマにした映画。
10月公開にもかかわらず、すっかり見落としていて今更観てきました…でも絶賛ヒット中らしく、まだ公開終了してなくて良かった!

そのヒットも頷けるほど面白い映画でした。
個人的には、2017年一番興奮した洋画です。今回はそんな「女神の見えざる手」のプレビューです。


映画『女神の見えざる手』 予告篇(キノフィルムズより)

主人公ミス・スローンとは

この映画の邦題は「女神の見えざる手」ですが、原題は「MISS SLOANE」。主人公の名前です。

相変わらず、邦題のセンスのなさが光ります…
というのは置いといて、この映画のタイトルはMISS SLOANEが良かった…と思ってしまうほど、主人公が濃くて強い。

そもそもこの映画は、政府の政策に影響を及ぼすことを目的に、戦略的に活動するプロ集団:ロビィストをテーマとしています。
ミス・スローンはトップロビィストで、アメリカの銃社会の規制派としてロビー活動をするのですが…

彼女の決断力、発想力、行動力、信念  etc…
どれをとってもすごい。さすがプロと思わせる身のこなしで、映画なんだけど、ミス・スローンの凄さがひしひしと伝わってきました。

そして、ロビー活動で「勝つこと」しか考えていないので、超ぶっ飛んでる…
一般的なモラルや常識は通用しないし、法律ギリギリの危ないこともするし(むしろ違法)、周りの人たちはみんなコマみたいな感じに扱うし…絶対に一緒に仕事したくはない(笑)

でもそれほど強烈なキャラクターなので、今まであまり映画で観たことがないほど圧倒的で引き込まれました。

脚本がすごい興味深く面白い

女神の見えざる手は、もともと弁護士だったジョナサン・ペレラ氏が書いた脚本。しかも初めて書いた脚本が映画化されたそう…まずそこに驚き。

日本ではあまり馴染みがないロビー活動をテーマとした内容になっていますが、それほど知識がなくともすごく面白いし、分かりやすい脚本になっていました。

アメリカの銃社会という社会的なテーマも織り交ぜ、政治の舞台裏をスピーディに描いているが故、息もつかせぬ展開の移り変わりに、130分ほどの映画ながらあっという間でした。

当然アクション映画のような迫力はないですが、相手の先手を読む頭脳戦なので、それを巧みに魅せる脚本や構成がホントに面白かったです。
そしてセリフがめっちゃ多い!!
こんなにセリフが多い洋画観たことない…(笑)
そのため、字幕の文字の移り変わりがめっちゃ激しい!

役者の演技も観つつ、文字も追いつつで大変ですが、逆転につぐ逆転の末に導かれるラストはぜひ劇場で観て欲しいですね。

敵も味方も観客も欺く展開に胸が熱くなる

聴聞会に召喚され、過去の仕事における不正についての真偽を問われるミス・スローン。
そんなシーンから始まるこの映画ですが、まさかこのオープニングが壮大なフラグになっていたとは…

劇中では、敵も味方も関係なく欺き、利用し、勝つことしか頭にないくらいの強烈なキャラクターであるミス・スローンですが、観てるこっちも欺かれました。

それくらい、目まぐるしく変わる展開に胸が熱くなったし、ホントによく作られたストーリーだなと思いました。
これは面白かった!

ジョン・マッデン監督のインタビューによると、「シーンの流れを時系列にせず、リズムを重視する方法が模索された」らしく、どうりで主人公の感情というか、勢いが映画に現れていたなと感じました。

これはきっと2回目が面白いに違いない。。


政治的な要素がある映画ってたくさんあるんですけど、どれも魅せ方が退屈で面白くないと思っていました。

でもこの映画は、政治、ドラマ、サスペンスなどが色々織り交ぜて合って、脚本とスピード感がたまらなく面白くて、2017年で一番興奮した洋画でした。
あんまりブログにこういうことは書かないですが、この映画はおススメです。

公式HP:女神の見えざる手

トップ画像:(C)2016 EUROPACORP – FRANCE 2 CINEMA

鑑賞記録

劇場

TOHOシネマズみゆき座
(シネスコサイズ)
上映回:2017年12月5日(火)15時25分~

本編前予告作品一覧(上映順)

(1)スター・ウォーズ 最後のジェダイ

(2)空海―KU-KAI―

(3)パディントン2

(4)ジャコメッティ 最後の肖像

(5)カンフー・ヨガ

(6)ユダヤ人を救った動物園~アントニーナが愛した命~

客層

30代 1割
40代 2割
50代 7割
男女比 8:2

備考

たまたま機会があって平日に来てみたら、さすがに年齢層高かった…平日&みゆき座という場所柄、平均年齢50以上でした。




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