アメリカの片田舎の大通りに突然現れた真っ赤な広告。
サスペンスを彩る要素としてそれだけで十分すぎて、これは観に行きたいなぁ…と思い立った本作。
なんでも、本年度アカデミー賞の最有力候補だそうで…
内容としては確かに納得の作品でした。
(この後に書きますが、個人的には観かたを失敗しましたが)
今回はそんな「スリー・ビルボード」のレビューです。
「スリー・ビルボード」日本版予告編(フォックス・サーチライト・ピクチャーズより)
「スリー・ビルボード」ってどんな話?
ミズーリ州の田舎町。7か月ほど前に娘を殺されたミルドレッド(フランシス・マクドーマンド)は、犯人を逮捕できない警察に苛立ち、警察を批判する3枚の広告看板を設置する。彼女は、警察署長(ウディ・ハレルソン)を尊敬する彼の部下や町の人々に脅されても、決して屈しなかった。やがて事態は思わぬ方へ動き始め……。
(シネマトゥデイより)
娘を殺されたミルドレッドが、田舎道に寂れた看板があるのを見つけて、その広告社であるエビング広告社に発注するというところから物語が始まります。
その看板の最後の広告は、1986年のオムツの広告。
それ以来誰も発注する人がいなかったようで、かなりボロボロ。
しかし、ミルドレッドの広告が完成してからは、見違えたように看板が生まれ変わりましたが、周りに何もないところにポツンとある真っ赤な看板がとても異様な光景に見えます。
これをきっかけにミルドレッドは注目されることになりますが、みんなが信頼している警察署長に対する批判メッセージだったため、町の人たちは複雑。
そんな中、少しずつ事態が動き始めていく…というサスペンス要素満載の映画です。
【ココが良い】演技、音楽
この映画はミルドレッドが寂れた看板を見つけるところから映像が始まるんですが、そこで流れているオペラが、これから始まる物語やミルドレッドの感情を推し量っているような雰囲気を醸し出していて良かったんですよね。
全編通して、物語や人物の感情を表現している音楽がとても良かったです。カーター・バーウェルさんという方が音楽を担当しています。
また、一番良かったのは主人公のミルドレッドを演じるフランシス・マクドーマンドさんですね。
娘を殺されたという難しい役柄でしたが、その悲しみや、自分自身の後悔、犯人に対する憎しみ、警察に対する怒りなど、様々な感情を見事に演じていました。セリフのトーンもかなりリアリティがあって、結構食い入るように観ましたね。
言葉も違うので、海外映画の演技って正直分かり兼ねるんですけど、でもミルドレッドは「良い」って分かったね。
セリフだけじゃなくて、目とか表情とか仕草とか、色んなものをフルに使っていてこれは凄いと思いました。
【ココはちょっと…】「誰も辿り着いたことのない結末へと連れ去る衝撃と感動のクライム・サスペンス」
映画の宣伝文句として随所に記載がありますが、「誰も辿り着いたことのない結末」
これがミソですね。
正直、映画は全然悪くないんです。
アカデミー賞になっても大いに納得するよくできた映画だったんですけど、観る側次第で良くも悪くもなってしまうのかなと思います。
その観る側がダメだったパターンが自分なんですけど…
予告やあらすじをみて「こんな映画かなぁ」と勝手にイメージしてしまったんですね。
他の映画でもやるのでそこは大した問題じゃないんですけど、想像していた展開と違って、なおかつ、想像を超えた部分の上手い落としどころが自分で見つけられなかったんです。
そういう脚本や構成にしてるんであればいいんですが…
例えば、ミルドレッドの娘の事件には警察が関わってるのかと思ったら別にそうではなかったり…
犯人の手がかりを発見して真相に近づいたかと思えばそうではなかったり…
この映画では、謎を解き明かすことがゴールではないのね。
そこの部分をイメージしてしまったもんだから、ラストは「えっ、これで終わり?」と思ってしまいました…
完全にこれは自分自身の問題なんですけど、よくあるサスペンス映画を想像していくとちょっと違うと思います。
人間ドラマを中心に観ないといけませんでしたね…(失敗)
怒りはどこへ行くのか
スリービルボードが発端で、事態がどんどん変化していくこの物語。そもそも、この広告は警察に対する怒りを広告で表したものなので、怒りが周りに与える影響というか、怒りが周りを巻き込んでいく様をスクリーンで表現したのかなと解釈しました。
広告を出したことで協力してくれる人も現れたりしてましたが、怒ることで巻き込まれた人が傷ついたりしているのを観て、怒りは何も生み出さないなぁと思いました。(社会的に正しいという前提の場合)
全編を通して、怒りの演技が素晴らしかったフランシス・マクドーマンドさんはホント拍手です。
というわけで、スリー・ビルボードの評価は…
音楽★★★★☆
物語★★★★☆
脚本★★★★☆
演出★★★★☆
感情★★★★☆
総合評価4.0
公式HP:スリー・ビルボード
トップ画像:©Twentieth Century Fox Film Corporation.
鑑賞記録
劇場
TOHOシネマズ日本橋
スクリーン8(シネスコサイズ/TCX)
上映回:2018年2月2日(金)12時50分~
本編前予告作品一覧(上映順)
(1)羊と鋼の森
(2)のみとり侍
(3)ラプラスの魔女
(4)いぬやしき
(5)空海-KU-KAI
(8)ダウンサイズ
(9)15時17分、パリ行き
(10)シェイプ・オブ・ウォーター
(13)グレイテスト・ショーマン
客層
30代 1割
40代 3割
50代 6割
男女比 7:3
平日の日中だったため、若い年代は皆無。
多くが高齢者。